錆と腐食


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    腐敗というのは、あまり考えたくない現象です。しかし、生物学で細菌のことを詳しく知ると、途端に興味深く思えてきます。そして、発酵などの現象と地続きになり視野が広がります。錆や腐食にも、同じような面がありそうです。ただこちらの場合は、金属や物性、電気化学の世界です。

    最近おもしろい本を読みました。「錆と人間」ジョナサン・ウォルドマン著、三木直子訳です。
    Cover
    "RUST The Longest War", 2015 の翻訳です。このノリ?のよい著者による錆にまつわるレポートの数々は、パイプラインの検査をどうやって行うか?(スマート・ピグのお話)、防食の専門家たちの姿、ステンレスの発明は誰が?、ビールを缶に入れることを可能にしたキー・テクノロジーは?などなど、身近でありながら、聞いたこともなかった事柄を紹介してくれます。

    ここでは、この本の話題を中心に、錆と腐食を語ります(笑


  • System

    先頭記事が更新されました。


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    目次をもとに紹介です。

    • 第一章 手のかかる貴婦人 自由の女神と錆

    ニューヨークの自由の女神像の、設置後初めての大補修の記録です。1980年~1986年のお話です。

    • 第二章 腐った鉄 錆と人間の歴史

    錆の科学研究史です。ボイル、ガルバーニ、デービー、ファラデーらが登場します。英国海軍からの依頼でデービーが発明した犠牲陽極のお話などです。

    • 第三章 錆びない鉄 ステンレス鋼の発明

    シェフィールドの街とそこで生まれ育ったハリー・ブレアリーのお話です。

    • 第四章 缶詰の科学 錆と環境ホルモン

    著者がアメリカ最大の缶メーカーが主催するカン・スクールに潜入するお話です。

    • 第五章 インディアナ・ジェーン 錆の美

    廃製鉄所に忍び込んで錆を撮る写真家のお話です。著者も一緒に侵入します。「錆と人間」の表紙もこの写真家の作品らしいですが、原著と訳本で写真が違いますが、どちらもそうなのでしょうか?

    • 第六章 国防総省の錆大使

    国防総省の「経費削減のホームラン王」ダン・ダンマイアーさんのお話です。

    • 第七章 亜鉛めっきの街

    溶融亜鉛めっきが、塗料による防錆よりも優れているというお話です。

    • 第八章 錆と戦う男たち

    正義の5人組、インスペクター・プロテクター、ドクター・フォービドゥン、塗料ガール・スーパーコート、キャプテン・カソード、スマート・ピグのお話です。

    • 第九章 錆探知ロボット パイプラインと錆

    全長1300キロメートルのパイプライン(トランス・アラスカ・パイプライン)の「完全性管理」に使われる、スマート・ピグと呼ばれる巨大ムカデ・ロボットを追いかけるお話です。

    • 第十章 暮らしの中の防錆用品

    ラスト・ストアと、ラストベーダーのお話です。

    • 第十一章 防食工学の未来

    タイムカプセルに入れるのがお奨めなのが Ageless Z100 という製品であることから始まり、物品の長期保存の話題、熱可塑性製材で橋を造るなど、総括と未来のお話です。


  • Global Moderator

    この本で「スマート・ピグ」というのを知りました。本文中では「巨大ムカデ」と形容されていますが、実物の写真を "smart pig"で画像検索して見ると、ムカデには見えませんでした。試験管洗浄ブラシのお化けという感じです。映画「デューン砂の惑星」だったか「スターウォーズ」だったかにも似たモンスターが出てきた気がします。

    スマート・ピグは、一種の移動式ロガーというもので、パイプラインの内部を、石油の流れに押されて移動していきながら測定するそうです。センサーには、管壁の厚さを測定する超音波方式のスマート・ピグと、磁界の変化から間接的に壁の変化を検出する漏洩磁束方式のスマート・ピグがあるそうです。前者のほうが望ましいのですが、2001年に以降は、石油産出が低下、トランス・アラスカ・パイプラインの流量が減少し、管内のロウの蓄積が増え、超音波方式が使えなくなっているそうです。パイプライン内を流れながら全長にわたるデータを内蔵のハードドライブに蓄積するそうです。回収後にデータ解析し、腐食などによって管壁が薄くなっている箇所を見付け、パイプラインを補修するそうです。これによって、一旦生じると莫大な損失を生む石油漏洩事故を予防するそうです。



  • 錆と腐食@ソム さんが発言 :

    "smart pig"

    @ソム さん
    ジャバザハットを飲み込んだやつよりは、デューンのSandwormの方が近いようですね。
    デューンの映像化ですが、映画以外にもSFチャネルのミニシリーズ(Dune~Children of Dune)があります
    私はこちらの方がはったりや飛躍がすくなくて好みです。日本でもDVD化されましたので中古なら手に入るかもです。
    Julie Cox、Daniela Amavia、Susan Sarandonと脇を固める女優の選択も贔屓です。

    God Emperor of Dune 以降の映像は見たいような見たくないような・・・


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    @riffraff さんが発言 :

    デューンの映像化ですが、映画以外にもSFチャネルのミニシリーズ(Dune~Children of Dune)があります

    ふふふ。デューン話は@riffraff さんのために用意されているのでした。


  • Global Moderator

    溶融亜鉛めっき

    何のことか知らなかったのですが、写真をみてあれか!となりました。ホームセンターで見かけるような金具で、安っぽいけど銀色にピカピカしていて、表面が白っぽくなったりしているやつだと思います。あれは亜鉛だったのですね。450°ぐらいの亜鉛を入れたお風呂のようなところに金属をドブづけしてめっきする方法みたいです。

    溶融亜鉛めっき
    from Wikipedia under Creative Commons


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    「思考のおやつ8」で、イギリスのシェフィールドの街のことを調べていて、この土地でステンレス鋼が発明されたことを知りました。

    「錆と人間」の第3章はこれにまつわるお話です。本の中でも特に興味深い内容でした。ある種の合金にすると鉄が錆びなくなる(=高い耐食性を持つ)という発見は、歴史上何度か記録されているそうです。しかし、最終的に事業レベルまで持っていくことができたのがハリー・ブレアリーだそうです。

    一八八二年のある日、ハリー・ブレアリーという名の、痩せっぽちで黒い髪をした十一歳の少年が生まれて初めて製鋼所に足を踏み入れた。恥ずかしがり屋で、暗闇を怖がり、食べ物の好き嫌いの多いその子は、同時にまた好奇心が強く、産業革命のただ中にあったイギリスのシェフィールドは、彼の好奇心をそそるものだらけだった。
    (「錆と人間」 p.59)

    読みたくなってきませんか(笑?

    当時、錆びない鉄というのは、不可能物質の代名詞のように思われており、なかなか本気に扱われなかったようです。加工もしにくく扱いにくいため、実用的な用途があるのか?とも思われていたようです。ハリー・ブレアリーはこの合金が、カトラリー(=食卓用のナイフ、フォーク、スプーン類)に適するとして、実用化を提案しました。当時カトラリーといえば銀製であり、黒く変色する(錆びる)ため、ピカピカに保つためには磨く必要がありました。この解決です。

    いまとなると、身の回りの多くのものがステンレス鋼で作られるようになっており、もはやこれが特別な合金であるとも(人によっては)意識しないようになっています。酷くなると、ステンレスが特別に安定な金属であるように思い込んでしまうこともあります。以下は、ソムと呼ばれるある人物の話です。この人は、ステンレスバット内で洗浄をしようと、ある酸を入れてしゃかしゃかふっていたそうです。そのうち緑色に溶けてきて入れていたものが台無しになり、困ったことになったそうです。その種の作業にはガラス容器が良いと気づいたといいます。



  • @ソム さん (^^♪
     脱線ですが、マスターキートン(パイナップルアーミーだったかも知れません)で、エクスキャリバー:アルミの剣<軽くて錆びにくいので祭儀用に最適;しかも近代以前は超高価)のお話があったような。



  • @ソム さん
    おひさしぶりです。
    私は樹脂の加工を専門にしておりまして餅は餅屋、金属の加工や鍛造、表面処理は私はまったく知識がありませんので興味津々です。
    シェフィールドというと映画「Full Monty」の舞台であった記憶があります。映画では現代では不景気で寂れてしまった工業都市という風に描かれていました。「思考のおやつ8」を改めて拝読いたしましたが、リーズやシェフィールドが舞台になるのはイングランドが好景気だった時代のある種の郷愁(サウダージ!)が彼の地の方々には共通感覚であるのかも知れないと思いました。行ったこともないので推測ですが(汗。
    サッカーではリーズユナイテッドもシェフィールドのチームも現在なかなか苦戦してるようです。


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    @フムフム さん

    こんばんは。樹脂加工ですか! 以前、加工の話をされたときには、金属加工だと思い込んでいました。私も樹脂加工したことあります。アクリルなどです。小型のNCフライス盤のようなのを使っていました。切削条件が悪いと摩擦熱で溶けて台無し(またまた)になることがあり、難しいなあと思いました。切削油のようなものも、金属の場合とは感触が違うようでした。何も付けず乾燥状態で加工するほうがよかったりと、条件探しが難しかったです。

    金属加工は旋盤がシュルシュルと楽しかった憶えがあります。塗装などもできたらもっと楽しいだろうと思いますが、なかなか難しい印象です。アルマイト処理のキットはいつか暇になったら手を出してみたいです。アルマイトの場合には、電圧を使って強制的に錆びさせ(酸化アルミニウム)耐食処理としているわけです。奥が深いです。

    シェフィールドには私も行ったことがないので、いろいろな情報から勝手に想像しています。Full Montyも見てみたいです。


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    @riffraff さん

    「マスターキートン」を途中の巻までしか読んでいないからかもしれませんが、エクスキャリバーの記憶は有りません。アルミ加工をしたときの印象からすると、アルミの剣は、軽くて威力がなさそうです(笑 あまりピカピカでもないですし(一円玉思い浮かべて下さい)、有難味も???

    ところで、ジュラルミンというと豪華な感じがしますが、アルミの一種(合金)だってご存知でした? 「超々ジュラルミン」とか、名前は凄そうです。



  • @ソム さん
     世の中は便利なものです。google先生一発です。パイナップルARMYの方でした。(__)
     イメージはジェラルミンの剣です。大変な宝物だと思ったのにドン引きと言った話だったと思います。(;'∀')
     超超ジェラルミン! カーゴカルト、アイアンボトム、アメリアイアハートでお話が書けそうです。(^^♪


  • Global Moderator

    第二章は、錆と腐食の研究すなわち、電気化学の歴史を扱っています。この本によると、「電気化学」という言葉を作ったのはサー・ハンフリー・デービーだそうです。

    学校で初めて電気化学について習ったとき、妙にわくわくしたことを憶えています。そのときのわくわくがどこから来たのか、もう憶えていませんが、いまから考えれば、化学反応の真髄に触れた思いがしたからかもしれません。電気化学にとって、電気分解や電池の話は、オモテの顔にしか過ぎません。デービーのアシスタントだったマイケル・ファラデーが看破したように、「あらゆる化学的現象は、電気的引力の表出にすぎない」からです。20世紀に明らかになったのは、それが原子と電子の構造に関係するということです。

    「錆と人間」には書かれていませんが、生物のエンジン部分も電子の流れです。植物の細胞内の葉緑体では、光エネルギーを使って、膜にあるタンパク質複合体の中で、電子をゆっくりと動かし、電子の受容物質に受け渡します。その過程で、プロトンが膜の片側に生じます。このプロトンが濃度勾配に従って膜を通過するときに、一種のモータータンパク質(ATP合成酵素)の逆回しによって、ATPの合成を行います。これが光合成です。ATPは細胞の行う様々なプロセスを駆動するエネルギーとして使われます。動物も同じです。糖の分解によって、同様のプロセスを動かしています。このときの電子の移動は、細胞内のミトコンドリアの膜にあるタンパク質複合体で行われます。その後にプロトンの濃度勾配がATP合成酵素によってATP合成に使われるのも同じです。ピーター・ミッチェルの化学浸透説です。

    さて、学校の化学の話に戻ると、電気化学のオモテの顔は、電気分解や電池でした。生物系の実験で、タンパク質やDNAの分析をする者は、ある意味日常的に水の電気分解をしています。電気分解自体が目的ではありませんが、電気泳動です。えんを含む溶液に浸したゲルの両端に電圧を掛けると、電極からは細かい泡が生じます。サブマリン型や、スラブ型のゲル電気泳動の話です。DNA配列解析のための(従来型の)シーケンサーでは、キャピラリー電気泳動を用いますが、こちらでは電極に泡が出ているのを見たことは有りません。とにかくも、泡が見えるということは、入門書(※)によると、(水の電気分解について)「気体の発生が目でみえるときの電流密度は 0.1 mA cm^-2 以上あり、この電流をもたらす反応物の濃度は理論上少なくとも 10^-5~10^-4 M必要」だそうです。

    電気分解というのは学校の授業で最初に出てきて、簡単そうに思えますが、※の本によるとそうでもないらしいです。序章は「むかし習った電気分解を忘れよう」です。この本によると、教科書の誤った記述は以下だそうです:「電解質水溶液に電流を通じると、イオンは電気の力によって電極に引きよせられる。電極のところで、陽イオンは陰極から電子を受け取って原子(分子)になり、隠イオンは陽極に電子をとられて原子(分子)になる。これが電気分解である」。これが誤りであることが実験やその理論を通じて説明されます。まず事実として、イオンがたまたま反応物になる例は電解反応のうち1%以下だろうという点です。結論として、「電解は『電気エネルギーが進める化学反応』であり、『電荷の引き合いが起こす現象』ではない」と説明されます。

    このようにオモテの顔ですら奥が深い電気化学への、さらに日常的な接点が錆です。

    ※「電子移動の化学―電気化学入門」 日本化学会編 化学者のための基礎講座11


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